西陣カーボンが「新しい伝統的工芸品」といえる3つの理由
伝統的工芸品とは、長い年月の中で時代を超えて受け継がれてきた技術によって作られる工芸品です。西陣カーボンは、長い歴史をもって受け継がれてきた西陣織と新しいカーボン繊維を融合させて作られたものです。今回は、伝統と最新の組み合わせによって生まれた西陣カーボンが「新しい伝統的工芸品」といえる理由について解説します。
1.国の伝統的工芸品に指定される5つの条件
伝統的工芸品と伝統工芸品は、言葉は似ていますが実は意味が違います。伝統的工芸品は、国が定めるもので通商産業省が指定します。伝統工芸品は東京都が定めるものです。それぞれ基準が異なり、伝統的工芸品に認められるためには5つの条件があります。
ひとつ目は、主として日常生活で使われるものです。西陣織は、日常生活で使われるものであり昭和51年に伝統的工芸品に指定されています。他には「ほとんどが手作業で製造されていること」「伝統的な技術や技法で作られていること」「伝統的に使用されてきた材料を使っていること」「一定の地域に生産者が集まっていること」があります。西陣織は、織り機を使って職人がカタンコトンと手作業で織ります。この技法は平安時代から受け継がれた伝統的な技術であり、使われている材料も絹という伝統あるものです。さらに西陣織は多品種少量生産が特徴の西陣で生産される先染の紋織物をいいます。一定の地域に生産者が集まり作っています。まさに5つの条件をクリアした織物が西陣織なのです。
西陣織以外にも、福岡県の久留米絣や沖縄県の首里織など、その土地その土地で長く培われてきた多くの織物が伝統的工芸品に指定されています。
2.理由1: 日常という枠を超えたから
西陣カーボンが「新しい伝統的工芸品」と言える理由のひとつ目は「日常という枠を超えたから」です。伝統的工芸品の条件は「日常生活で使われているもの」でした。たしかに西陣織は、日常で着る着物や日常で使う小物などに使われてきた伝統的工芸品です。しかし時代の変化とともに人々の日常も大きく変化しました。そこで、時代に応じて西陣織を進化させたものが西陣カーボンです。
西陣カーボンは、バッグや財布などの日常使いできるものに使われるだけでなく、車や壁紙など用途の範囲を広げました。
3.理由2: 伝統的な技術と最新の原材料を組み合せたから
伝統的工芸品の条件の中に「伝統的に使用されてきた材料を使っていること」があります。西陣織は、絹という長い歴史ある材料を使って作られています。しかし絹だけでは用途の範囲が限られます。西陣カーボンは、カーボン繊維などと組み合わせています。新しい繊維を取り入れながらも、絹糸が持つ鮮やかな色を活かしています。また、カーボン繊維の弱点ともいえる「毛羽立ち」も西陣カーボンは特殊な加工を用いることで克服しています。
「織る」という伝統的な技法は守り、最新の原材料を取り入れて弱点は最新の技術で克服した西陣カーボンは、まさに新しい伝統的工芸品と言えるのではないでしょうか。
4.理由3:西陣織の新しい価値を生み出したから
西陣織を一言で表現するならば「華やか」「豪華」「雅」などではないでしょうか。一方、西陣カーボンを一言で表現すると「シャープ」「かっこいい」「斬新」かもしれません。西陣カーボンは、西陣織がもつ伝統美に新しい価値を加えたのです。西陣織に興味を持つ人たちは、主に女性や中高年だった傾向があります。しかし「シャープ」「かっこいい」「斬新」という要素が加わった西陣カーボンは、男性や若者も興味を持っています。
伝統的工芸品の多くは、その形を大きくかえず受け継がれています。そのため、ターゲットが変わることもありません。しかし、西陣カーボンは新しい材料や加工を加えることで新しいターゲットやユーザーを開拓したのです。
5.おわりに
伝統的工芸品は「守ること」がキーワードになっています。機能性が重視される最近の製品は味や情緒に物足りなさを感じます。かといって「守る」だけでも物足りなさを感じるでしょう。西陣カーボンは、守りながら新しさを加えた「新しい伝統的工芸品」です。